[マイラ ―むかし、マイラは男だった―]
(1970/ Myra Breckinridge)知る人ぞ知る怪作。
ずーっと気になっていたのをやっと見た。
こういうカルトムービーがまさかDVDになっているとわ・・・。
ありがたいこってす。
マイロンは性転換手術を受けて美女マイラに変身した。さっそくマイラは叔父のバックが経営する演劇学校に乗り込み、死んだマイロンの妻と名乗って遺産の取り分を要求するが、バックは弁護士を使ってマイラを追い返そうとする。
マイラはしばらく講師として働くことに・・・。この演劇学校には、俳優エージェントを経営するレデイ・レティシアがバックについている。
彼女は所属タレント(♂)を片っ端から”食っちゃう”ツワモノで、演劇学校はその供給源なのだった。
キャスティングはムダにゴーカ。
伯父のバック・ローナーは、巨匠ジョン・ヒューストン。
レデイ・レティシアはメイ・ウエスト。この時77歳で27年ぶりにカムバック。
セックスコメデイの元祖女王。さすがすっごい貫録だわよ。
メイ・ウエスト嬢の衣装デザインは、なんとイデス・ヘッド女史!(アカデミー賞8度受賞)
レデイ・レティシアに食われちゃう新人クンが、若きトム・セレック(一瞬の出番)
やがてマイラは演劇学校の学生カップル、ラスティとメリーアンに魅かれて行く。
メリーアンを演じているのは、ファラ・フォーセット。めんごいど。
そして、マイラはいきなりワンダーウーマンのようなコスチュームになり、ラスティを犯すのだった。
なにやら”器具”を腰に装着した(画面でははっきりとは描かれない)マイラにラスティはカマを掘られちまう。
とまあ、なんだか話の展開がとりとめがなく、見ていて、ありゃりゃりゃなかんじ。
この後、バック・ローナーが雇った弁護士がマイラの調査をし、彼女を糾弾するのだが・・・。
主役マイラは、ラクウエル・ウエルチ。美しいわあ。
この人って「大根」みたいに言われているけれど、どうしてどうして、あっぱれの熱演。
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この作品は27歳の天才監督、マイケル・サーンがハリウッドに招かれ、そして映画界から消えて行ったいわくつきの作品と言われている。
マイケル・サーンは、長編第一作監督作品[ジョアンナ](1968)が高い評価を受けた。(チロル未見)
その成功を受けて、20世紀フォックスは彼に声をかけたってことなんだろう。
原作はゴア・ヴィダルの小説。1968年に発表されると一大センセーションとなり、なんと2千万部の大ベストセラーとなった。
ゴア・ヴィダルって
[セルロイド・クローゼット] に登場した。
[ベンハー] で、チャールトン・ヘストンとスチーヴン・ボイドが「昔同性愛関係にあった」という裏設定をウイリアム・ワイラーに進言した人。
彼自身もゲイ。こんなベストセラーを書いていたのか。
↓ ゴア・ヴィダルはこの脚本も書いてる。
これってポルノ大作だったんだっけ? 覚えてない。
性転換手術をした美女が主人公で、セクシュアルでスキャンダラスな内容。
マイケル・サーンの演出は、なんつーか革新的かつ挑戦的!
女性となったマイラの隣りにしばしばマイロンがいる。手術をしてもマイラの中には女性性と男性性があるというメタファーなのだろうか。それとも外見は変わっても、マイロンはマイロンってことなのだろうか。とにかく見る側は混乱する。
そして、ハリウッドのひんしゅくを買ったのが、ハリウッド映画の名作旧作クリップが編集され、シーン、シーンに挿入されたこと。
ユニークな演出なんだけど、ハリウッドの名作が切り刻まれ、スキャンダラスな映画に使われたことが許せなかったらしい。
→ この旧作クリップの分量がけっこう多いので、見ていてちょっとうっとーしかった。
映画は興行的に失敗し、マイケル・サーンはハリウッドを追われた。
以降その才能を発揮することはなかった・・・。
マイケル・サーンのキャリアをチェックしたら、監督業は半ば廃業して俳優として仕事してた。
主にTVシリーズが多いけれど、最近では [裏切りのサーカス] や [レ・ミゼラブル] にも出演していた。オドロキ!
↑ 若き日のマイケル・サーン 才気走ってナマイキそう!
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マイロン役レックス・リード、本職は映画評論家(ゲイ)。
[ゴングショー] の審査員だったと聞いて遠い目・・・。
そういえばいたような・・・。なつかしすぎるよ、ゴングショー!
当時テレビ東京のこの時間帯は、これとTVドラマ [ソープ](ビリー・クリスタルがゲイ役だった。吹替えはグレーゾーン・三ツ矢雄二)と [モンティ・パイソン] の揃い踏みだった。おもしろかったなあ。