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漫画 刑務所の中

「刑務所の中」 花輪 和一

刑務所の中刑務所の中
(2000/07)
花輪 和一

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 銃刀法違反で三年の実刑をくらった著者自らが体験した獄中マンガ記。記憶をたよりにまるで普通の日常を語るように淡々と再現された作品は、従来あった告発型の獄中記とは違ったリアルさを表現しており、マンガ史的にも貴重な作品。

赤れんがまつり」 に行ったら、やっぱりこれでしょう。
再読。 何度読んでも、やっぱり文句なしの傑作。

1994年12月8日、花輪和一は趣味のモデルガン集めが高じ、銃刀法違反容疑で北海道警に逮捕された。翌95年懲役3年の実刑判決が下りた。
これはその ”獄中記” である。


刑務所の中というのは、簡単に見学・体験できるものではないので、興味深いものである。
中はどうなっているのか? どんなことをやっているのか? という知りたい欲求をこの本は満たしてくれる。
出所後記憶を頼りに描かれたものだが、よくぞここまで! みごととしか言いようがない。
時に偏執的に細部まで描かれた刑務所の日常に驚くばかり。
又、細密画とも言える花輪のペンタッチ、画力は素晴らしい。
巻末の解説を書いた呉智英(この人の読み方は何度聞いても忘れちゃう 「くれともふさ」)をして、
――高畠華宵や伊藤彦造のペン画の系統に連なるもの
と言はしめている。

これに花輪のギャグセンス、ペーソスやブラックな笑い、シュールなカットが加わり、唯一無二の作品となっている。


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花輪本人を思わせる、ちびで丸顔のキュートなおっさんがいい。
このおっさんの表情やひとことに何度も爆笑してしまう。

この作品の特色と言えるのが、全体を覆うポジティヴさである。
時にム所内の理不尽な「きまりごと」を挙げてはいるが、おっさんはなんだかまったりと刑務所生活に馴染んでいるのである。
これがネガテイヴに憤ったり、叫んだりされるとこちらもちょっと困ってしまうのだが。

<それじゃさま懲罰房>
刑務所の中でちょっとした ”反則” をしたおっさんは、懲罰房に入れられる。
独房である。ここでおっさんは日中袋はりの作業をしたりする。

――あ~~~ すごく充実してる
誰とも会わなくていいし 仕事は頭も使わないし
これは自分にピッタリの場所だな


と、今日中に三百枚作るぞ とか さあ、がんばるぞ
と、袋はりに張り切るおっさんに思わず笑ってしまう。

ところでこの作品には、独特の言葉が出て来る。

――今夜の春雨スープは ビューだよ ビューだよ ほら!

――ラッキー 金時豆は甘いからビューだよ


「ビュー」
これを数年前最初に読んだ時、「ビューってなに?」 とダーリンに聞いたら、
「ビューティフルのことにきまってるじゃないか」 と言われた。
ビューチホー、ワンダホーのことかと納得していたら、今回再読にあたり、真相が判明した。

「ビュー」とは、北海道(特に釧路方面)の方言で、「ごっつう~」とか「なまら~」などと同じ、いわゆる「超~」と同じ強調語。転じて、「最高!」「スバラシイ」という意味だそうな。
長年ダーリンの知ったかぶりをうのみにしてました。
今回再読して良かったです。勉強になりました。

ちょっとブラックなくだり。
入浴帰りに廊下を歩くおっさん。
――ところで死刑囚はどの房にいるのかな
ああ・・・死刑囚に会いたい


巻頭の阿部幸弘(漫画評論家)らとの鼎談でも言っている。

花輪 : あと、死刑囚に会えれば最高だったんだけど
阿部 : 会ったら何がうれしいんですか?
花輪 : うん?・・・会うだけでもう。


なんかおもしろいよ・・・花輪和一って。
ちなみに死刑が執行されると、夕食が一品多く出るらしい。

尚、この鼎談は花輪のこの言葉で終わっている。

――いや、もう。もう行きたくないですから(笑)


今さらですが、ちびまるこちゃんに出て来る「花輪くん」は、さくらももこが尊敬する 花輪和一からのイタダキです。(花輪くんのフルネームは、花輪和彦)
方や丸尾くんは、丸尾末広から。(丸尾くんは 丸尾末男)
さくらももことは対極にある漫画界の(陰の)両巨頭との組み合わせがおもしろいです。
この辺のセンスがさすが違うんだよね、さくらももこわ。

丸尾末広は、今年の手塚治虫文化賞新生賞を受賞しましたね。
乱歩ファンとしては、是非読んでみたい作品です。

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手塚治虫文化賞といえば・・・こんなエピソードをみつけた。

<刑務所の中>は第5回手塚治虫文化賞の最有力候補となったが、
「マイナー漫画家を自負する自分としてはいかなる賞も貰う資格が無い」 
として受賞を拒否している。


かっくいいなあ~、花輪和一。 ビューだよ! ビューだよ!

関連記事:
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Comment

ちはっす

花輪和一!!! 
昔、まだ書店のコミックスにビニールカバーが
かかっていない頃、
この人のマンガを夢中になって(立ち)読んだ思い出が。
情け容赦なく命が奪われていく。。。つうか
むごい話だった。
鬼才だよね。

でも、そういう話を書く人が、
実はすこーーーんと、どこか一部が突き抜けているのかね?

>花輪 : うん?・・・会うだけでもう。

このコメントがいいなあ。
このコメントを読んで
「え どうして?」思わない側の
自分に苦笑い えへへ。

さくらももこが尊敬しているって へ~~~!
ももこもゆるい不条理さがあるもんね。
漫画家同士の「尊敬」の相関関係 かなり気になる!







■みんちい嬢

さすがみんちい嬢、押さえるとこ押さえてんなあ(立ち読みして)
>実はすこーーーんと、どこか一部が突き抜けているのかね?
この作品を読んで、まさにそれ!という気がしたよ。

これ以外の作品を読むのは抵抗あるが、みんちい嬢のコメを見て、無性に読みたくなった。

>ももこもゆるい不条理さがあるもんね。
そうそう、<ちびまるこ>にも端々で感じられるが、
<KOJI KOJI> とか、みょーな不条理さがよく出てるよね。

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